
- コールセンターの仕事はノルマが厳しそうだな。
- ノルマ無しと聞いているけど本当かな。
- ノルマがキツイ仕事にあたったらどうしよう。
こういった疑問に答えます。
この記事を書いている僕は、コールセンター業界で15年の経験を持つマネージャーです。
何千人もの直雇用スタッフや派遣スタッフの採用、育成、定着に関わり、センター運営をしてきた専門家です。
こういった僕が、詳しく解説していきます。
コールセンターの「ノルマなし」は本当です➔あるのは目標値(KPI)
コールセンターにはノルマがあるというイメージがあるかもしれませんが、それは過去の昔話です。今や都市伝説。
ただし、コールセンターに限らず、企業には必ず営業目標や売上目標などがあります。
ノルマがないといっても、個人がより力を発揮し、企業に貢献するための努力はやはり必要です。
このように、現在はノルマはなくて、目標があります。
なので、ノルマが達成できず精神的に追い詰められるようなことは、まともな会社ではあり得ません。
コールセンターにノルマがなくなった理由
そもそもコールセンターにはノルマがあってはいけないというのが僕の持論です。
なぜなら、ノルマがあると正常なコールセンター運営ができないからです。
ノルマがあることで起きる弊害は、上司による過剰なプレッシャーによるパワハラ問題と、ノルマ達成に手段を選ばない不正問題の誘発です。
最近は企業のコンプラ違反はかなりテレビやネットで叩かれ、それにより企業の存続も危うくなるため、今はどの企業もコンプラ遵守を真剣に考えるようになっています。
コールセンターは特に個人情報の山なので、そのような環境下で不正行為があると社会に対する影響も大きいですよね。
また、少子高齢化で労働人口が減ってきており、企業の採用難が深刻化しているため、人材を大切に育成する必要性が増しています。
こういったところが、現在コールセンターからノルマがなくなった背景になっています。
目標値(KPI)が設定される理由
ノルマがコールセンターの正常運営を妨げる一方、適切な目標設定は安定したセンター運営に欠かせません。
なぜなら、目標設定によって、頑張った人が正当に評価されるようになるからです。適切な目標設定はモチベーション維持やパフォーマンス向上、成長のためにも必要なのです。
わかりやすいのは、頑張って目標(KPI)を達成すると、時給とは別にインセンティブがもらえる制度になっているコールセンターは多いですよね。
もしくは、ベース時給がアップする仕組みになっていることも多いです。
良いところは伸ばし、悪いところは改善することで、オペレーター自身も成長を実感できます。それは、お金以上の価値にもなり得るのです。
そのため、適切な目標設定はコールセンターの安定運営にはとても大切なことなんですね。
コールセンターはすべての行動が数値化されやすい
ちなみに、なぜコールセンターの仕事では目標設定されやすいかというと、コールセンターの仕事はすべての行動や結果が数値化されやすいからです。
- 発信件数が〇〇〇件、うち繋がったのが〇〇件で、契約成立したのは〇件
- 受信件数が〇〇件、一件の平均対応時間は〇〇分で、顧客満足度が〇〇%
逆に、たとえばサービス業などではひとつひとつの行動を数値化するのは難しいですよね。
これは、ある意味コールセンターの面白いところでもあります。
得意分野を伸ばして不得意分野を改善する試みは、ゲームでキャラクターの各種パラメーターを上げていくのと似ています。
そのため、コールセンターの仕事は他と比べて目標設定や、目標に対する結果の振り返り場面が多いのです。
アウトバウンド業務の主な目標値(KPI)
目標値(KPI)といっても、アウトバウンド業務とインバウンド業務でそれぞれ内容が異なります。
アウトバウンド業務に多い獲得系業務でいくと、最も重要なのは成約数です。成約数の計算式は以下の通りです。
トークスキルの高い人が、繋がりやすいリストを選び、沢山発信するほど成約数は伸びるということですね。
そのため、アウトバウンド業務で目標設定されやすいKPIは以下の通りです。
- CV(Conversion):
成約数 - SPH(Sales Per Hour):
一時間あたりの成約数。オペレーター1人が一時間あたりに成約した件数。 - SPC(Sales Per Contact):
対コンタクト成約率。カスタマーと繋がった件数のうち成約した割合。
8時間で4件成約した場合のSPHは0.5です。
10件電話がつながったうち5件成約した場合のSPCは50%です。
- DPH(Dials Per Hour):
一時間あたりの発信件数。オペレーター1人が一時間あたりに発信したコール数。 - CPD(Contact Per Dial):
対発信コンタクト率。発信した件数のうち電話が繋がった件数の割合。接触率。
8時間で300件発信した場合のDPHは37.5です。
100件発信して30件つながった場合のCPDは30%です。
インバウンド業務の主な目標値(KPI)
インバウンド業務については、問い合わせしてきたカスタマーに満足してもらうことが目的です。
電話がすぐ繋がること、質の良い対応をすると、カスタマーに喜んでもらえます。
そのため、インバウンド業務で目標設定されやすいKPIは主に以下のようなものです。
- AHT(Average Handle Time):
平均対応時間。オペレーターがカスタマーからの問い合わせを対応するのにかかる時間の平均。 - CPH(Contact Per Hour):
一時間あたりの対応件数。オペレーター1人が一時間あたりに受信したコール数。
6分、10分、12分の計3本の対応があった場合、AHTは9.3です。
8時間で28件対応した場合、CPHは3.5です。
- PRR(Positive Response Rate):
顧客満足率。顧客アンケートで好意的な返答を得られた割合。 - NRR(Negative Response Rate):
顧客不満足率。顧客アンケートで否定的な返答を得られた割合。 - FCR(First Contact Resolution):
一次解決率。再入電されることなく、カスタマーからの一度の入電で問題を解決することができた割合。
10人のカスタマーに対応後アンケートを送信したうち8人から回答があり、そのうち7人が「満足」、1人が「不満足」の回答でした。この場合のPRRは87.5%です。NRRは12.5%ですね。
10件対応したうち、2件で問題が解決しきれず再入電が来た場合、FCRは80%です。
目標値(KPI)達成の温度感は企業やセンターによって異なる
以上がアウトバウンド業務とインバウンド業務それぞれの主要KPIです。コールセンターが安定運営するにはこれらをバランス良く高めていく必要があります。
KPIはオペレーターには特に知らされず、管理者だけが把握している場合もありますが、しっかりと運営しているセンターはオペレーターともKPIの数値と達成状況を共有しています。
また、個人が特定されないように配慮しながらランキング形式にして掲示したり、スーパーバイザーが面談して長所や短所を一緒に振り返り課題設定をしてくれたりすることもあります。
KPIとして設定される数値目標が実力に対して適正であれば良いですが、背伸びした目標設定になっていると管理者もピリピリしてフィードバックの回数が多くなったりと、プレッシャーです。
ただ、管理者にプレッシャーをかけられるから仕事をするのではなく、どうせ時間も労力もかけて働くなら、スキルを身に付けるとか成長とか、お金以外に得られる価値も大切にしたいですよね。
管理者に言われなくても、積極的に学び、スキルを付ける努力をし、自分の力を発揮することで仕事の意義ややりがいを感じたり、自己肯定感や存在意義などを高め、仕事の時間を有意義にしていきたいものです。
ただ、KPI達成の本気度はセンターによってバラツキがあるし、スキル以上に自分と業務の相性もあるので、入ってみてあまりにもキツイようであれば、無理せずKPIが高すぎない仕事を派遣会社に紹介してもらうことも「有り」ですね。
まとめ
以上、コールセンターのノルマ事情についてまとめてみました。
アウトバウンド業務、インバウンド業務に関わらず、昔のようなノルマはもうないので、仕事選びの際にはあまり気にする必要はありません。
特に、ランキング上位企業や東証一部上場企業はパワハラ防止、コンプラ遵守に相当気を遣っているので心配ないですよ。
コールセンター求人をこれから探したい方は、こちらも参考にしてみてくださいね。